雨。雨。ふれふれ。もっと、ふれ。
12月まであと一時間。
僕は一冊の本を読んでいた。
すこし、喉が渇いたので本を片手にキッチンに。
片手間で開いた冷蔵庫の中の氷がきれている事に気づいた。
靴を履いて、ドアを開けると
雨が降る夜空は僕が家をでるのを少しためらわせた。
でも、ドアの閉まった音に背中を押されて憂鬱に傘を開いてコンビニに。
コンビニから戻って、買ったばかりの氷を開けて
コップに入れて、ジンジャエールを飲み
机の上に置かれた読みかけの本を開いた。
本を読みながら、2014年最後の一ヶ月が始まった。
12月を一緒に迎えたその本のタイトルは、
「デザインの輪郭」
おっ!え〜!!!そんな馬鹿な!!!....。
なんていう驚きがあるような、面白みがあるような本ではないのだけれど、
毎回読む本、すべてが面白いわけではない。
どちらかと言えば、失敗したな。という本のほうが圧倒的に多いように感じる。
ただ、本の面白いところは、
読む日によって受ける印象が変わるところだ。
この本を読むのは、何度目だろうか。
多分、4回目くらい。
しっかり読んだのは、買った日と昨日だけ。
短編集で書かれているこの本はスラスラとよめるし
日本を代表する工業デザイナー深澤直人の世界観を本を通して覗いている気分にさえなれる。
雨が降る12月になったばかりの夜。
ある章を、僕は読み始めた。
第四章-考えない(Without thought)
雨の降るある日、
僕は出先から自宅のあるマンションに向かい、
濡れた傘をバサバサとしてからたたむ。
「傘立てがなくて、
たまたま床にタイルが敷かれていて、
その幅7mm程のタイルの目地に傘の先をあてて壁に立てかける。」きっと、ほとんどの人が無意識にする行為だと思う。
デザインというものがなくても、人間は既に、環境にあるものすべてのものをその状況に応じて価値に変換している。
壁は空間を仕切るものであるが、
体をよりかけるという価値も提供している。
「壁とは何ですか」と訊いて、
「誰かと喋りながらからだを寄りかけるものです。」
と答える人はいないように、
思考の概念と、からだがものと関わっている事実とは異なるものなのである。
最初に読んだときは気に留めなかったのに、昨日の僕には大切な一章だった。
「確かに。」
僕は、ものに意味を求めすぎているかも。
何をやるにしても、
それをやる意味を見出したり、やらない理由を探している。
そこに傘立てがなくても人は無意識に既にある環境の中で対処することと同じように、
今自分がいる場所をすこし、立ち止まって見渡せば、
思いもよらない所に自分の悩みを解決するヒントが有るかもしれない。
新しい出会いに溢れる今だからこそ、持ちすぎてるかも。
今の自分にあった、背伸びをすればきっと心地よいはず。
環境を変えるのではなくて、環境の見方を変えよう。
自宅の玄関の壁にかけられたままのまだ濡れた傘を見て、そう思った。